Leeライダースジャケットの開発者・O.E.Kratz

 

1.はじめに・・・謎の人物、Oscar E Kratzについて

論より証拠、まずは下記のデザイン特許をご覧ください。

 

1948年・リーライダースジャケットのデザイン特許
譲渡人として、The H.D.Lee Companyの記載あり

私がはじめに、Oscar E Kratzなる人物を知ったのは、知人の研究家から「こんな資料もあるんだよ」と見せてもらった特許資料からでした。

長きにわたり、有名なワークウェアやデニムウェアを誰がデザインしたか、というのは謎とされてきました。

このOscar E Kratzなる人物、今までデニム関係の資料などでは全く名前が登場しなかったように思います。

この無名とも言える人物が、現在まで続くLeeのライダースジャケットのデザインを発明したとなると、これは驚きの事実です。

さらに、ライダースジャケットだけではなく、Oscar E Kratzは数多くの特許を出願していました。

 

2.カーハートを譲渡人とした特許を出願していた時代(1911〜1915)

 

1911年、セーフティポケットに関する特許
譲渡人はHamilton Carhartt社

 

1914年、オーバーオールの仕様に関する特許。
ハミルトンカーハートおよびその子息との連名で開発者として記載されている。
特許の譲渡は同じく、カーハート社

 

1915年、オーバーオールの背当て布に関する発明。
特許の譲渡人は 同じくカーハート社

 

このように、第一次大戦ごろ、カーハート社の創業者、ハミルトンカーハートと連名で特許出願をしたり、また譲渡人に同社がなっています。

 

3.H.D.リーを譲渡人としていた時代(1936〜1948)

 

次に、Oscar E Kratzの名が特許に登場するのは、1936年。今度はリー社を譲渡人として登場しはじめます。

1936年、オーバーオールのデザインに関する特許。
譲渡人は、H.D.リー社。
現代までほぼデザイン不変の、Lee 91-SBのデザインそのものです。

1938年、サスペンダーループに関する特許。
譲渡人は、H.D.リー社。

1943年に出願された、ペンシルポケットの特許。
これも譲渡人はH.D.Lee社。
現代まで続く、91-Bシリーズのフロントポケットのディテール。

 

これらの特許は、1941年H.D.Lee社のプライスリストにもその存在の証拠が見られます。

1936年のオーバーオールの背当て特許、1938年のサスペンダーループに関する特許、いずれも特許登録済であることが宣伝文にうたわれている。

 

一方で、ペンシルポケットはまだ、カンドメ無のV字にステッチが入った仕様。

ワークウェアの広告には、しばしば「Patented」・特許登録済という言葉が登場しますが、その証拠を今回、見つけることができました。

 

4.推測とまとめ・・・Oscar E Kratzとはどのような人物だったのか?

リーバイストラウス社のリベット打ち特許を発明したのは、かの有名なヤコブデイビスです。

 

Oscar E Kratzもデイビスと同じように、ワークウェアに対する何か新しい発明を企業に持ちかけ、企業を譲渡人とすることにより、特許出願を行っていたとも考えられます。

一方で、そもそも、Hamilton Carhartt社に在籍し、その後、H.D.Lee社に移った、今でいえば一流の技術者で転職につぐ転職をしていったのかもしれません。

 

いずれにせよ、今回紹介した幾つもの特許から、20世紀ワークウェアの仕様・デザインを創造した人物の一人であることは確実です。

このように、重要な人物が今日まで、さして重要視されずに来たことが不思議でなりません。

今後も、この謎の人物、Oscar E Kratzは追い続けていこうと思います。

また、どなたか、情報がありましたら、ぜひご連絡ください。

 

参考文献・サイト

United States Patent and Trademark Office

1941 The H.D.Lee Price List

 

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