下が丸くなった胸ポケット。ここも手作業で折られています。この折ってるところが細かなヒダを入れながら折っていて、見ていて「これは技だな」と感じる部分。

現代はこういう工程を半自動でやる専用機もありますが、私がお願いしている総社縫製さんはあえて入れていません。というか、もともと持っていたのに、あえて使っていません。それは、我々のような依頼する側がいろいろな仕様を要望するからです。半自動でやる機械を使おうと思えば「ポケットはこの形しか出来ません」となります。ドレスシャツ工場は往々にして、「襟はこの形の中から」「ポケットはこの中から」といった制約があります。

でも、それでは我々のようなメーカーの要望には答えられない！とあえて機械から手に戻した。総社さんのすごいところです。それができる技術が残っていたのもすごいのですが。

肩、ステッチなしのヨーク。抑えステッチがない分、生地が自由に動くのが良いと言われている仕様。

脇、極細の折り伏せ縫い。昔、縫い方がわからなくて試行錯誤した部分です。二つ折れラッパ使って縫うと、こんな感じできれいに、片方が二本ステッチ、片方が一本ステッチで縫えます。総社さんは得意ですが、昔作ってもらっていた村上さんや矢神の工場のおばちゃんは縫い方わからなくて教えてに行きました。懐かしい。でも、すごいなと思うのは、皆、金具の使い方を知らないだけで、それがわかればあっという間に私がやるより早く、きれいに縫うようになってしまう。

やっぱり、分業でその工程を一日何十、何百と縫う人のうまさは独特です。サンプル縫いで、最初から最後まで一人で縫いあげる人のうまさもあるのですが、量産は量産でまた違った「うまさ」があるのです。