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半玉ブチの縫製
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今回もファーストサンプルの縫製工程から、いくつか紹介します。
一つが半分玉ブチ。
通常、両玉もしくは片玉が多いですが、この手のコートにはフラップが挟まれる部分に、半分だけ玉がついたポケットが良く使われています。
それを作っている工程です。
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まず、あらかじめ印をして玉ブチの折りかえり位置でアイロンをした玉ブチの口布をとめます。
これは捨てミシンでこのあと、このステッチがかかった部分が窓のように開くことになります。
ちょうど、身頃本体のポケット穴位置と、口布を同じ位置を合わせて縫っていることになります。
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次に、折り返して、ポケット口の縦半分の太さに折った布を、出来上がりの位置で地縫いします。
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さらに、起こして、上側も、こちらは玉がいらないのでまっすぐな状態で縫います。
今の工程は前後逆になってもかまいません。
というより、その方がすんなりとできます。
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最初のステッチ位置、ここを切っていきます。
ハサミでも良いのですが、私はつい、手のみと呼ばれる刃物で切ってしまいます。
特に、生地の真ん中を切るには、ハサミよりもカッターナイフのように使える物の方が切りやすいです。
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出来上がりより1センチ手前あたりまで切り・・・ |
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そこからは、ポケットの端に向かって切り込みを入れます。 |
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このようなY字型に切り込みを入れるのですが、このとき、怖がらずに地縫いぎりぎりまでステッチを入れないと、このあとの工程で、玉ブチ布が綺麗にひっくりかえらず、エクボのように生地の吊れが出来てしまいます。 |
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では、ひっくり返します。
まず、ひっくり返る前です。
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さぁ、ひっくり返しだしました。 |
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口布がすべて裏側へ回って、ひっくり返し終わりです。
ここで、アイロンを使って、落ち着かせます。
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次に先ほどのY字部分を地縫いします。
これでポケットの縦の部分にも指が入らなくなり、一応ポケット口の形が作られた状態です。
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ポケット下側にステッチを入れます。
これはこの段階で入れておかないと、手が入れられなくなってしまいますね。
本来は、先ほどの縦の部分にもステッチが入るのですが、今回の仕様では、ポケットぐちの端部分は革で補強されカバーされてしまうので縦ステッチは入っていません。
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次に、袋布に向こう布(ポケットを開いた時に見える、表地と同じ生地)をつけます。 |
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この袋布の逆側を、先ほど裏に引っくり返った口布と連結します。 |
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そして、中縫いしてひっくり返したのがこの状態。
ポケットの上部はまた開いています。
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表に戻って、あらかじめ作っておいたフラップを流し込み、上側のステッチを入れていきます。
これで、先ほどの開いていた上側も閉じられてしまいます。
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最後の補強革を縫いつける前にひと手間。
身頃を横にどけて、途中工程で地縫いしたY字部分を金づちや木槌でたたきます。
ポケットが中縫いもされているので、とにかくこの部分は固くなっています。
そんな時は、アイロンを十分にするだけでは足りず、このようなトンカチでたたいて、厚みを軽減するとともに、ある程度、組織をやわらかくします。
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そして最後、表からレザーの補強をステッチして縫製完了です。
このレザーも一枚づつ、押さえ金を変えて、縫製糸を太いもの(20番)に変えて縫っていきます。
いくらトンカチでたたいても、やはり固く、またレザーはすべりが悪いため、押さえ金を滑りの良いプラスチック製のものに変えて縫います。
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芯地使いと中間工程
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見返しと、地襟の芯には、ジュート(麻)の粗布を使っています。
現代、よく使われる接着のついた芯とも違い、独特のハリと固さがあります。
これを、縫い代で留めつけて使います。
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参考にしたビンテージです。
ほぼ例外なく、この粗布が芯地に使われています。
おそらく、毛芯の代用品であったと思うのですが、結果、ラフな雰囲気も出てくれるので採用しました。
が採用するのは良いのですが、今では芯としてこのような粗布を使うことはまず無いので探すのが大変でした。
結局、芯を扱っている業者さんにはなく、資材屋さんを当たってもらって工業用の資材(麻袋など)から調達してもらいました。
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中間工程です。
袖の経常が良く分かると思います。
また、裏地はコットンウールの身頃裏、表地と同じ素材の裾、麻の芯地が留めつけられた見返し。
身頃裏と、裾のパーツはパイピング始末がなされています。
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裏地にシープスキンの襟を地縫いしたところです。
とにかく厚く、縫うのも大変です。
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先に縫っておいた表側と、袖もつけた裏地側をぐるりとまわりで地縫いします。
ここも、上下送りミシンを使って、厚みと戦いながらの地縫いです。
さらに地縫いした後は、前端など、できるだけアイロンで割り、次のひっくり返す工程で綺麗に始末できるように準備をします。
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ひっくり返しているところです。
まだ、この段階では表と裏がくっついてはいますが、服なのかどうなのか・・・という状態です。
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ある程度までひっくり返し終わった状態です。
ほぼ、服らしき形をしています。
このあと、裾や袖口、前端の始末をしていき完成です。
ご覧いただいたように、裏地付きの洋服は、服を2枚作っているようなもので、特に工程数が多い衣類です。
ただ、その分、仕様やパーツにも凝ることができるので、作っていて、何よりもやりがいを感じます。
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