胸ポケットはシンプルに、樽型にしました。
現代であれば「ポケットセッター」というポケットを折りながら縫うようなミシンがあるので、特にシャツのような仕様がある程度決まっているものを製造する工場では多く取り入れられています。
ただ、私の使う工場はワークシャツからボタンダウンシャツまで、多種多様な製品を縫うので、そのようなミシンはありません。
それを逆手にとって、現代のようにミシンが発達する前の生産設備、つまり手とアイロンと型紙です。これを駆使して、精一杯きれいにつけるよう指導しています。
いくらきれいにつけようとしても、やはりセッターのように完璧には行きません。それが、ビンテージに見られる独特な歪みであり、味わいなのです。
無理やりゆがめるのではなく、何十年もシャツを作っている人がきれいに頑張るけれど、でも機械ほどはきれいにいかない。
このギリギリの雰囲気が私は好きです。
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